− プロフィール −
実践コミュニケーション プランナー
市場 真理子 (いちば まりこ)
《略歴》
大学卒業後、飲食チェーン店にて人事教育および店長を経験。
その後、大手金融業で教育責任者を担当し、同時にコーチング講座を主催。教育研修の理論を現場で導入した経験を活かし、コーチングの枠を超え、現在は実践コミュニケーションプランナーとして、企業と個人を対象にコミュニケーションを駆使して結果を出し、人と社会を元気に活き活きさせることを理念として活動中。
資格:
生涯学習財団認定コーチ
HP:現場監督.com
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『手を離さない』
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みなさまこんにちは。
私の挫折と前進の経験からコミュニケーション術をお伝えするこのコラムも、残り2回となりました。
今回は北極星のように、いつも変わらず私の心の支えとなっている、ある女性との経験をご紹介します。
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飲食店で勤務していた時、私は一時期トレーナーとして社員教育に携わっていました。
その際、一緒に仕事をして、トレーナーとして指導をしてくださったコンサルタントの女性がいます。
実は、私はもともと研修という時間が大嫌いでした。
現場(店舗)には仕事がたくさんあって、学ぶことは山ほどある。
それなのに、わざわざ交通費をかけて、集合して研修をすることに何の意味があるのか。講師の話を聞こうともせず、月に1回の研修では随分と不真面目な態度を取ったりもしました。
そんな私がなぜか、入社1年目で社員教育担当になり、大嫌いだった研修を運営する立場になってしまいます。
そこで出会ったのが、そのコンサルタントの先生です。
一緒に仕事をしていた時、実を言うと、私はその先生が苦手でした。
反抗的でさえあった新入社員研修から私を見てきた先生は、私の事をとてもよく知っている存在。
私の考えを読んで、ぐさりと刺さる指摘をする人。
横にいるといつも緊張して、箸の上げ下ろしさえまともにできなくなる程でした。
そんな彼女との仕事は厳しく、研修のトレーニングでは、ほとんど合格をもらえず、2年間は受講生の前で話をする事もできず、ひたすらオブザーバーとしてノートをとり続けていました。
その間、先生の研修を受ける受講生を見続けてきた私は、次第に人が変化し、成長していく姿を目の当たりにして、人材開発の仕事に非常に興味を持つようになります。
ある日、研修の後に先生から食事に誘われたことがありました。
正直に言うと、「緊張するから、逃げだしたい・・・」そんな心境を隠しつつ、仕事以外で初めての2人での食事。
緊張のあまり、お酒を飲みすぎて、つい本音を語ってしまいます。
「私は最近、トレーナーという仕事が好きになってきましたが、
自分で望んでなった仕事でもないし、不安も多いし、
この先も続けていけるか、自信がありません」
すると、向かいに座っていた先生が突然、私の手を握って言いました。
「絶対にこの手を放さないから。プロのトレーナーになるんでしょう」
一瞬、何の事だか分からず、余計に怖気づく私。
私がプロのトレーナーなんて…でも、手を放してもらえないらしい。
その後、店長になり、先生の影響ですっかり夢中になっていた人材育成の仕事に専念したいと、転職しました。
さらに、もっと近づきたいと思って独立し、現在の道を選びました。
何かで迷った時、自信を失いそうになったとき、常に支えになっていたのは、先生からいただいた「手を放さない」という言葉です。
私が店長として疲れ切った表情で毎日を過ごしていた時、同情の言葉をかけてくれる周りの人と違い、「女性のリーダーは絶対に疲れた顔をしちゃダメ」と、笑顔で言われたのも先生。
社員教育の仕事に就いたものの、講師の仕事にもっと専念したいと独立を考えるようになった時も、私が進みたい道を問いただし、大丈夫よと背中を押してくださったのも先生。
「手を離さない」という言葉を、その場ではすぐに理解できなかった私ですが、自信がない私よりも、私自身の成長を信じて、本当に手を離さずにいてくれる存在は、とても力付けになり、迷っても、失敗しても、なんとか進んで来ることができました。
コーチングの重要なスキルとして、「承認」があります。
相手の存在や事実を肯定的に認めると、やる気が引き出される。そのためには、相手を観察して、ほめる。時に効果的に叱る。
もちろんとても大切なスキルですが、私は良いところを探してほめる、バランスを取って叱るという行動にもまして、相手が「無限の可能性がある人」だと信じて、接し続けるあり方こそ、大切なのではないかと感じています。
心から承認されていることは、態度や言葉でしっかりと相手に伝わります。
すると、承認された人は自分で自分を認める、「自己肯定感」を持ち、私はやれる!という気持ちで自分の頭で考えて行動ができるようになります。
この、「自己肯定感」を感じている人はとても少ないようです。
私がクライアントの方と目標に向かって話していても、進みたい方向は明確になったのに、いざ前進しようとすると、
「どうせ私なんか」「昔も失敗したし」「やったことがないし」
と、突然自分でブレーキを踏んでしまう場合がよくあります。
また、職場などでも、
「どうせ○○さんはこれ位のレベルだし」
「この分野の仕事したことないはずだから」と、
周りが枠を作ってしまうと、本人は余計に自分で作った枠を強固にしてしまい、枠を超える事が
難しくなります。
そんな時、相手の自己肯定感を引き出すため、相手の進みたい方向を一緒に見て、相手ができる人だと信じて向き合う事が大切です。
「私は大丈夫」「やったらやれる!」「失敗してもいい!」
と、自分を認めることができると、人は周りが想像もしなかったような前進をする事があります。
先生に背中を押していただいた「手を離さないからね」という言葉は、今も私を引っ張り、時に立ち返る場所となって、私を支援し続けてくれています。
最終回となる次回は、私が独立してクライアントの方と向き合うようになって見つけた、相手と軽やかな気持ちで一緒に前進する方法をお伝えします。
どうぞ、お楽しみに。
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